🌊ワクワクする時間をくれた、おばちゃんの話|波瀾万丈ライフ番外編

ワクワクする時間をくれた、おばちゃんの話

母より少し年下の従姉妹のお母さん――
私たちは「おばちゃん」と呼んでいた。

子どもの頃の私にとって、
おばちゃんはとても特別な存在だった。

背が高くて、スタイルがよくて、
いつも長い髪が艶々していた。

美容院できちんと手入れされているその髪は、
子どもの目にもわかるくらい綺麗で、

「なんておしゃれな人なんだろう」

と、会うたびに思っていた。

私の母は、
どちらかというと実用的で堅実な人だったから、

おばちゃんの持つ
少し華やかで自由な空気は、
なんだかまぶしく感じた。

私たち兄妹は、
母の仕事の都合で

時々、その従姉妹の家に
泊まりに行くことがあった。

その日は、
少しだけ特別な日だった。

母の料理のほうが
きっと上手だったと思う。

でも、おばちゃんの家の食卓には

揚げ物や、
子どもが好きそうなおかずが並んでいて、

それがなんだか嬉しかった。

「今日はお泊まりだ」

そう思うだけで、
胸がわくわくした。

母がまだ運転免許を持っていなかった頃は、

おばちゃんの車で
いろんな場所に連れて行ってもらった。

朝早くから向かう海。

隣の県までの買い物。

話題のスイーツ。

知らない街の景色。

車に乗るたびに、

「今日はどこに行くんだろう」

と、心が弾んだ。

おばちゃんと一緒にいると、
いつも少しだけ世界が広がる気がした。

車の中では、
流行りの邦楽が流れていた。

うちの母が聴くのは、

ブルーコメッツや
クラシック音楽だったから、

私は密かに思っていた。

――おばちゃんって、
やっぱりナウい。

子どもながらに、
そう感じていた。

私たち兄妹は、
みんなおばちゃんが大好きだった。

でも――

大人たちの会話から聞こえてくるのは、
あまり良い話ではなかった。

お金にルーズ。

男の人の話もちらほら。

派手な暮らしぶり。

スナックでママをしていたこともあってか、

周りの評価は、
決して良いものばかりではなかった。

母たちの話を聞きながら、

私はなんとなく

“大人になるって難しいんだな”

と思っていた。

それでも私は、

あのおばちゃんがいなかったら

海に行くことも、

噂のスイーツを食べることも、

少し背伸びした
キラキラした時間を知ることも、

きっとなかったと思う。

子どもの頃の
楽しかった記憶は、

半分以上、
おばちゃんがくれたものかもしれない。

おじちゃんと離婚をして、

従姉妹を育てながら、

ひとりの女として生きていた
おばちゃん。

従姉妹が
こんなことを話してくれたことがある。

「欲しいものを与えていたら
いいと思ってたみたいで、

なんでも買い与えてくれた。

でも、
本当に欲しかったのは
物じゃなかったんだよね」

私はその言葉を聞いて、

少しだけ
羨ましいと思ってしまった。

私はむしろ、

欲しいものさえ
我慢することが多かったから。

“なんでも買ってもらえる”

その世界を
知らなかった。

だから、

従姉妹の寂しさを
ちゃんと理解できていたかはわからない。

でも今なら、
少しだけわかる気がする。

おばちゃんは、

きっと不器用だったんだ。

愛し方も、

生き方も。

実の娘から聞く話も、
決して褒められるものばかりじゃなかった。

それでも私にとってのおばちゃんは、

楽しい時間をくれて、

流行りの場所を教えてくれて、

美味しいものを食べさせてくれて、

涙もろくて、

少しだけ怪しくて(笑)

でも、
確かに大切な人だった。

十数年前、
電話で久しぶりに
おばちゃんの声を聞いた時、

私は思わず泣いてしまった。

きっと、

ずっと会いたかったんだと思う。

まだ、
親が必要な時に

従姉妹を置いていったこと。

そこには今でも
少し腹が立っている。

でも同時に、

感謝もしている。

子どもの頃にくれた
あのワクワクする時間は、

ちゃんと今も
私の中に残っているから。

遠い土地で、

男の人と別れて
暮らしているというおばちゃん。

元気ですか?

私は元気です。

ふと思い出して、

会いたいな、と
思う日があります。

こちらのおばちゃんの話も、
父の借金や失踪から始まった「波瀾万丈ライフ」の中にある、大切な記憶のひとつです。

家族のこと、母のこと、子ども時代のこと。
最初から読んでくださる方はこちらにまとめています。

▶ 波瀾万丈ライフまとめ
https://www.nobi-nobi-life.com/drama-life-summary/

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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