父と母は、高校の同級生だった。
父は、小さな建設会社の息子で、国体に出るほどのスポーツマン。
母は、幼い頃の食事がお膳で出てくるような大きな農家の娘で、畑がどこにあるのかもわからないくらいのお嬢さん育ちだったらしい。
それでも家ではちゃんと食事を作っていて、おせち料理も全部用意できる腕前を持っていたそうだ。
高校を卒業した母は県外で就職していたけれど、父はそんな母を車で迎えに行ってしまうくらい、猛アプローチしていたらしい。
当時、母には想いを寄せる別の人がいたらしいけれど、その人はかなり年上で、祖父母に反対されていた。
結果、迎えに来た父とともに、母は地元へ戻ってきた。
戻ってきてからは免許を持っていなかった母を、父はいつでもどこへでも送迎していたそうだ。
「姉を思って、いつも優しくしていて羨ましかったんだよ」
母の姉妹がそんなふうに話してくれたことがある。
結婚してすぐに兄が生まれ、数年後に私が生まれた。
私の名前は父がつけたらしい。思春期の頃は「こんな名前つけておいて、自分で家族を不幸にした」なんて思ったこともあった。
でも母は、「あなたが生まれてから数年が、父さんとの幸せな時間だったな」と、言っていた。
そんな言葉を聞くと、母が過去を振り返った時、父との幸せだった生活があって良かったと思った。
まだまだこの物語は、終わらない。
母は強くなっていき
幼い私たちは傷つけられていく・・。
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