※この記事は、心の整理のために、当時感じたことをそのまま書いています。表現により、不快と感じる箇所がありましたら申し訳ありません。
父が亡くなってから、数年が経ったころのこと。
父方の祖母が亡くなり、葬儀が執り行われた。
父の再婚相手とその子どもたちも、父の家族として当然出席していた。
私は、父の告別式のときに彼女たちに会っている。
前回投稿した『父じゃなくなった日と、離婚はしないと母が決めた日』に登場した、母に抱っこされた赤ちゃんの下に女の子がふたりいて、次女がどことなく自分に似ている気がして妙な感覚を覚えていた。
私たち兄弟は親族として最初から会場にいたけれど、母は一般の参列者としてお焼香にやって来た。
そしてそこで、あの人と再会する。
彼女は母の前で、深々と頭を下げて言った。
「その節は、大変申し訳ありませんでした」
事情をよく知る親族たちは、その様子を静かに見守っていた。
母は堂々と、少し微笑みながらこう答えた。
「そんなこと、昔の話よ。頭を上げて。おかげさまで私は今、とても幸せに暮らせているし」
その姿は、はたから見ても誇らしくて、強くて、何より穏やかだった。
その後、喫煙所でのこと。
私のそばに来たあの人が、こんなふうに話しかけてきた。
「〇〇さん(私)たちにも、本当にひどいことをしたのよね。本当にごめんなさい。私、今は精神的に病んでしまっていて、お医者さまにかかってるの」
私は母と同じように、落ち着いてこう返した。
「謝らないでください。過去のことですし、父を看てくださってありがとうございました。お大事にしてください」
そう口にしながら、内心では思っていた。
——バチが当たったんじゃないのかな。
一方の母は、
「私は苦労はしたけど、体は丈夫だし、自分の力で生活できる力もあるの。あのままでいたら、何もできない人になってたわよ。これでよかったのよね〜」
と、あっけらかんと笑って話す母と、娘夫婦の世話になっているという痩せて表情の暗いあの人。
まるで光と影のようだった。
少し意地悪に言えば、
「はい、元妻の勝ち」
という感じだったかもしれない。
本当に心から悪いと思っていたのかもしれないし、ただ体裁を保とうとしただけかもしれない。
でも、どっちでもよかった。
私たちにとって大切なのは、今が幸せであるという事実だけ。
・・・でも、私は強く思った。
完全に「母の勝ちだ」と。
[予告]
波瀾万丈ライフ 最終話
『父が帰ってこられなかった本当の理由』
父はなぜ私たちのもとへ帰ってこなかったのか。
——それは、優しさなのか、逃げなのか。
では、また次回に・・
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